人々と猫の共生を目指し、地域で管理されている「地域猫」。
お世話しているうちに「もっと幸せに暮らしてほしい」と思ったとき、飼い猫として迎えることは可能なのでしょうか?
今回は、地域猫の目的や迎える際の注意点などについて解説します。
飼い猫として迎えるにあたって、過酷な環境で生きる地域猫ならではのリスクについてもご紹介します。
地域猫とは?
地域猫とは、避妊・去勢手術を行い地域で管理されている猫のことを言います。
そんな地域猫たちは、避妊・去勢手術を終えた証として耳先がカットされているのが特徴です。
みけぽん
桜の花びらのように見えることから「さくらみみ」とも呼ばれているよ!
耳のカットは避妊・去勢手術で全身麻酔が施された状態でカットされます。
耳をカットすることによって、ひと目で避妊・去勢済みであることが分かるため、何度も捕獲や麻酔、開腹されるのを防ぐことができるのです。
猫と地域の共生を目指すこうした取り組みのことを「地域猫活動」と言います。
地域猫活動の目的
地域猫活動の目的は以下のとおりです。
- 飼い主のいない猫を今以上に増やさないこと。
- 地域猫として地域と共生すること。
- 野良猫による地域住民の迷惑をできるだけ減らすこと。
- 感染症や寄生虫の発生源にならないよう、猫の健康管理にも留意すること。
参考:公財 日本動物愛護協会
地域猫活動は、飼い主がいない猫の鳴き声や糞尿などの問題に向き合い、地域住民の合意のもとその地域の活動団体が主体となって「避妊・去勢手術」やルールに基づいた「餌やり」「トイレの管理」を行います。
そうすることによって、猫による地域住民への迷惑が減少し、地域の人たちと上手く共生できます。
地域猫活動の最終的な目的は、「望まれず生まれた命≒飼い主のいない猫」を地域猫として管理し、「今以上に増やさないこと」「今いる猫たちは地域の中でできるだけ快適に長生きしてもらう」ということ。
飼い主がいない猫をそのままにするのではなく、猫が好きな人もそうでない人もある程度許容してもらえるよう、地域の中で積極的に意見交換し、できるだけ多くの合意を得ることが大切です。
「地域猫」として管理することで、将来的に「飼い主がいない猫を減らすことができる」と考えられています。
地域猫は勝手に飼っていいの?
避妊・去勢手術されていて、地域で管理されている猫と言っても外の環境は過酷です。
交通事故や感染症などで命を落とす猫も少なくありません。
家族として迎え入れ、より安全な環境で過ごしてもらいたいと考える方は多いでしょう。
地域猫を「家族として迎えたい」と思ったとき、勝手に飼うことは許されるのでしょうか。
所有者がいない場合は飼うことができる
地域猫に特定の所有者がいない場合は、家族として迎え入れることが可能です。
しかし、外で生活する猫の中には、地域猫だけでなく「飼い猫」や「脱走した猫」などが紛れている可能性があることを覚えておきましょう。
そのため、地域猫を迎えるときは、本当にその子に飼い主さんがいないか確認することが大切です。
まずは、近所の人や地域猫の活動団体に相談してみましょう。
ひげちゃん
動物病院で「マイクロチップ」の有無を確認することも大切!
飼い猫だった場合
迎え入れた地域猫が万が一誰かの飼い猫だった場合、他人の所有物を勝手に自分のものにしたとして、懲役や罰金に処される恐れがあります。
また、飼い猫でなかった場合でも、姿が確認できなくなることで餌やりさんや地域のボランティアさんが心配する可能性があるため、マナーとして伝えておくことも必要でしょう。
トラブルを避けるためにも
- 家族として迎える前に近所にチラシを配る。
- 警察の遺失物届を出す。
- SNSなどで迷い猫出ないことを確認する。
など、飼い主を探す努力をすることも必要です。
地域猫を迎えるリスク
外での生活が長い地域猫の場合、ペットショップで購入した猫や保護猫などと異なり病気や感染症やそれに伴った医療費などが多く必要になる場合があります。
また、警戒心が強い猫を保護した場合は、人に慣れてもらうためのトレーニングも必要になるでしょう。
次に、地域猫を迎える前に覚えておくべきリスクについて解説します。
病気・感染症
野良猫の中には、猫エイズや猫白血病などの病気・感染症を患っている子もいます。
これらの病気を確かめるためにも、野良猫を保護した際の医療費は、約1万2,000円〜30,000円ほどかかる場合が多いです。
猫の状態によっては、血液検査やレントゲン検査、病理検査などが追加されることもあり、それ以上の医療費がかかることも。
先住猫がいる場合は、病気を感染させてしまう可能性があるのでしばらくは接触を避け、隔離しましょう。
すぐに慣れてくれるとは限らない
お外では人懐っこい子でも、新しい環境に恐怖を感じなかなか慣れてくれないことも多いです。
子猫の場合は新しい環境や人に慣れるのも早いですが、成猫の場合はそうもいきません。
人間と一緒に生活することだけでなく、今まで外で過ごしてきた猫にとって、室内の閉鎖的な環境に馴染めないケースもあります。
警戒心やストレスから食事やトイレをしなくなってしまうことも少なくありません。
新しい環境に慣れるまでの期間、飼い主さんは焦らず根気強く向き合う必要があることを覚えておきましょう。
トイレをなかなか覚えてくれない
室内で生活するためには、トイレのしつけも大切です。
猫砂を用意してもなかなかトイレだということを認識してくれなかったり、ほかの場所に粗相してしまうこともあります。
猫砂に猫の排泄物のニオイを付けて、トイレの存在を教えてあげましょう。
これまで排泄していた場所がわかる場合は、その場所の土や葉っぱを猫砂に置いてあげるのも効果的です。
地域猫を迎える際にすべきこと
最後に、地域猫を迎えるにあたってすべきことについて解説します。
事前準備
猫を飼うには用意するものがたくさんあります。
地域猫を迎えることが決まったら、まず家の中に入れる前に必要最低限の準備を行いましょう。
猫を迎える際に必要なものは以下のとおりです。
- ケージ
・・・家の中での安全を確保するため。 - キャリーバッグ
・・・動物病院を受診する際に必ず必要。 - ベッド
・・・ケージの中で落ち着けるもの。 - 毛布
・・・ケージの目隠しになるもの。 - トイレ・猫砂
・・・ケージの中に入るサイズ、猫砂は自然に近い「鉱物系」がおすすめ。 - キャットフード
・・・年齢にあったものを選ぶ。 - ごはん・水の器
・・・倒れにくいものを選ぶ。 - 軍手
- ・・・ケージに手を入れるとき、飼い主さんの手を引っ掻く可能性があるため。
そのほかにも、室内の環境が慣れたら、キャットタワーや爪研ぎ、おもちゃ、ブラッシングなどのアイテムを揃えていきましょう。
動物病院に連れて行く
地域猫を保護したら、すぐに動物病院へ。
元気そうに見えても、ノミ・ダニが付着していたり隠れた病気を持っていたりすることもあります。
猫の飼育に慣れていない場合は、獣医師さんにアドバイスや相談をするのもよいでしょう。
地域猫にかかる医療費は、動物病院によって大きく異なります。
あらかじめ近くの動物病院をリストアップしておき、受診する前に電話でおおまかな費用や必要なものを確認しておくと安心です。
まとめ
地域猫を迎えたいと思ったら、まずはその猫ちゃんに飼い主さんがいるかしっかり確認することが大切です。
また、地域猫に限らず猫を迎えることは、飼い主としての責任や覚悟が必要になります。
外の生活が長い猫であれば、飼い主さんや室内の環境に慣れるのに時間がかかるかもしれません。
猫と飼い主さんが幸せな生活を送れるよう、猫に関する正しい知識を持ってお迎えしましょう。
– キャトヘルスアドバイザー
– 猫の健康管理インストラクター
– 保護猫歴10年
– 2匹の保護猫と暮らす
猫と飼い主さんにとって快適な暮らし、愛猫といつまでも楽しく暮らすための知識を得るサポートをします。